メインコンテンツ | メニュー | リンクメニュー

Main Contents

2008年11月21日

【6年生】 公衆衛生をナメてはいけない(その4)

<< その3 を読む | その5 を読む >>


公衆衛生をマル暗記しないで,意味をちゃんと理解すれば,
格段に覚えやすいんですよ,というお話.

今回は「精神保健福祉法に基づく入院形態」について考えてみましょう.
さて,次の入院形態で,“2人以上の精神保健指定医の診察結果の一致を必要とする”のはどれでしょうか?

●任意入院  ●医療保護入院  ●応急入院  ●措置入院  ●応急措置入院
(from 102回-B12)


◆◆ 場合分けして理解しよう

正解は“措置入院”でした.
『精神保健福祉法』における入院形態はこの5つなので,この際覚えてしまいましょう.


これも,ただ漫然と暗記しようとすると,あとでごっちゃになってしまうかもしれません.
この5つには,どんな違いがあるのでしょうか?

まず,任意入院.これはわかりやすい.
患者本人が「入院します…」と同意をした場合ですね.
医師は,書面による入院の意思の確認を取らなければなりません.
また本人の申し出があれば,退院が可能です.

次に,医療保護入院応急入院をセットで見てみましょう.
医療保護入院は,患者本人は入院を拒んでいる(または意思確認が取れない)けれど,精神保健指定医が入院は必要と診断した場合,保護者の同意を取って入院させるケースです.
“医療保護→保護者”で,覚えやすいですね.

では,同じように精神保健指定医が入院は必要と診断し,急を要するのに,保護者の同意を取ることができない場合はどうしましょう.
このとき,応急入院の可能性を考えることになります.
例えば,意識障害や全生活史健忘などで身元不明なのに,急いで入院させないと生命の危険がある…保護者を探している余裕もないので,しかたなく応急入院の手続きを取ります.
“急を要する→応急入院”ということです.

応急入院は72時間以内に限られます.
それまでに適切な入院形態に変更するか,退院させる必要があります.
医療保護入院との違いは“保護者の同意”がないことでしたから,72時間以内に保護者を探して同意を取れば,医療保護入院となるわけです.
もちろん,本人の意識が回復して入院の意思が確認できれば,任意入院となります.

あとは措置入院緊急措置入院ですね.これもセットです.
措置入院は,患者に自傷他害のおそれがあり2人以上の精神保健指定医の診察が一致した場合,都道府県知事の命令で入院させることです.
(精神保健指定医が2人必要なのは措置入院だけです.)
緊急措置入院は,患者に自傷他害のおそれが著しく,精神保健指定医が2人そろうのも待っていられないくらい急を要する場合,やむを得ず1人の精神保健指定医の診察をもって入院させる措置です.
これも応急入院の場合と同じく,72時間以内に限られますので,それまでに措置入院など他の入院形態に切り替えなければなりません.


◆◆ 結局,何が違うの?

とはいえ,措置入院・緊急措置入院も,“自傷他害のおそれ~”が条件に追加されただけで,いまいち任意入院・医療保護入院・応急入院との違いがわかりませんね.

措置入院は,たとえば妄想の度合いがひどく,近所の人に危害を加えそうになった人がいて,警察がかけつけたとしますね.
で,どうも普通ではなく,精神障害が疑われる,と判断された場合,警察は保健所を経て都道府県知事に通報します.
そうすると知事は,2人以上の精神保健指定医を指名して,診察を命令し,診察結果が一致すれば入院させます.これが措置入院.

つまり,任意入院・医療保護入院・応急入院が,本人または保護者が入院を依頼する,あるいは医師が“入院が必要ではないか”と判断して本人や保護者に同意を得るのに対し,
措置入院・緊急措置入院は知事が行政の権限により診察を命令し,OKだったら入院させられるという,非常に強制力の強い措置なのです.
(強制力が強いだけあって,治療費は全額公費負担となります.)

どうですか,イメージがついたでしょうか?
強制力が強い,だからこそ措置入院だけは,2人以上の精神保健指定医が必要なんです.
緊急措置入院は2人そろえている余裕もないから,仕方なく1人でOK,でも72時間以内にもう1人探して措置入院にするなど,時間制限のない入院形態に移行してくださいね,ということです.
これで,冒頭の例題でも,間違いなく措置入院を選べますよね.


◆◆ 実際に多いのはどれ?

では,実際の入院形態の割合はどのくらいなのでしょうか?

全体の約2/3が任意入院約1/3が医療保護入院で,2つで98%以上を占めています.
その他の入院形態の条件の厳しさを考えれば,妥当な数字ですね.
措置入院は0.7%(平成17年)しかありません.
でも昭和50年には23.3%もあって,徐々に改善されてきた結果の数字です.

ではもっと気になるのは,国試で問われる入院形態はどれが多いのでしょうか?
実は国試に登場するほとんどが,医療保護入院なんです.
臨床の現場に出たら,任意入院を除けば最も遭遇することが多い入院形態ですから,当然かもしれません.

医療保護入院の条件を復習しましょう.
●1人の精神保健指定医の診察が必要
●保護者の同意が必要
でしたね.他に,
●入院後10日以内に病院管理者が都道府県知事に届け出る
●退院時には精神保健指定医の診察は不要
というのも知っておきましょう.

また例題を出しますんで,やってみてください.
精神保健は繰り返し同じことが問われるので,『QB公衆衛生』をひととおり解いておけばクリアできますよ.

101回-H7
(症例文略)入院治療の必要があり,両親が入院を希望している患者に適用される入院形態に関して正しいのはどれか.2つ選べ.
a 保護者の同意が必要である.
b 治療費は全額公費負担である.
c 対象はこの患者の疾患に限られる.
d 入院時に知事への届出が必要である.
e 2名以上の精神保健指定医の診察が必要である.


この場合は医療保護入院が適用となる.ということは,
a 保護者の同意が必要.
×b 全額公費負担となるのは,措置入院・緊急措置入院.
×c 対象は「精神障害者」であり,疾患ごとに限定されていない.
d 10日以内に都道府県知事に届け出る.
×e 1名でよい.2名以上必要なのは措置入院.

正解:a,d


(編集部 K)