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2008年08月07日

【4・5年生向け】 『病気がみえる』で“国試もみえる”! 第2回

編集部T.K.です.お久しぶりです.

あれ?覚えてないって(涙)

僕ですよ,僕!!
『病気がみえる』で国試や実習なども
“みて,理解する!”と一人孤独に叫んでいるT.K.です!!

第1回では,国試を用いて「Cushing症候群」を“みて,理解した!?”はずです.
第2回でも同じように国試を解いていきたいと思いますが,
第1回よりも,救急現場においても非常に意味のある問題を用意しましたので,
気の向くまま,お付き合い下さい.

はい,問題ドン!! (←口癖)

------
98C28~30 (一部解答に関係のないと思われる箇所は省いてあります)

次の文を読み,28 ~ 30 の問いに答えよ.
68 歳の男性.呼吸困難を訴えて来院した.
現病歴
4年前に慢性閉塞性肺疾患の診断を受け,定期的に診察を受けている.
1週前に上気道炎に罹患し,その後呼吸困難が増悪した.
現 症
意識は清明.呼吸数24/分.脈拍120/分,整.血圧130/90mmHg.
両側頸静脈の怒張を認める.腹部では肝を右肋骨弓下に6cm触知する.下肢に浮腫を認める.
検査所見
血液所見:赤血球460万,Hb 15.0g/dl,Ht 44%,白血球12,500,血小板42万.
血清生化学所見:血糖170mg/dl,Na 138mEq/l,K 3.5mEq/l,Cl 110mEq/l.
動脈血ガス分析(自発呼吸,roomair): pH 7.36,PaO2 54Torr,PaCO2 72Torr,BE +11mEq/l.
治療経過
経鼻酸素5 l/分を開始し,静脈路を確保して利尿薬を投与した.30分後に意識レベルが低下してきた.

C28 この患者の意識レベル低下の原因はどれか.
a 高血糖
b 血清電解質異常
c 脳血流量の増加
d 高流量酸素による呼吸抑制
e 代謝性アルカローシスの存在

C29 この患者で考えられるのはどれか.
a 気 胸
b 無気肺
c 肺水腫
d 肺血栓塞栓症
e CO2ナルコーシス

C30 この患者に行う治療はどれか.
a 鎮静薬投与
b 昇圧薬投与
c インスリン投与
d 間欠的陽圧呼吸
e 高濃度酸素投与


☆☆☆ 病態をおさえる!! ☆☆☆

本症のストーリーを簡略化すると,
「呼吸困難を訴える意識清明の患者さんが処置30分後に意識レベルの低下を認めた」
ということになるよね.
つまり,この30分間で『意識レベルを低下させる』何かが起こったわけだ.

すでに病態生理も診断も頭に浮かんでいるかもしれないが, こういった症例は救急現場においても非常に重要となるので, きちんと順序立てて考えていこう.

この患者さんは,
1.慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)の既往
2.1週間前に上気道炎
3.呼吸困難増悪+右心不全症状
という経過をとっている.

すなわち,感染を契機にCOPDが急性増悪したということがわかるかな?
さらに動脈血ガス分析でpH 7.36,PaO2 54Torr(正常値約100Torr),PaCO2 72Torr(正常値40±5Torr)と,低O2+高CO2の状態であることがわかるよね(II型呼吸不全).

だから,このお医者さんは低酸素と右心不全に対して,経鼻酸素5l/分と利尿薬を試みた.

しかし……
『意識レベルの低下』
という事態を招いてしまった.

この,意識レベルが低下した理由は大丈夫かな?
結論を先に言ってしまうと,経鼻酸素5l/分にある.
すなわち高濃度酸素が原因だ(低濃度 → 0.5l,1.0l/分くらい).


☆☆☆ なぜ高濃度酸素が意識障害の原因なのか!? ☆☆☆

ここで『病みえvol.4』p.43を開いてみよう.


この表……
宇宙人がふざけているかのように思えるが,
実は本症例(慢性II型呼吸不全)のポイントを的確におさえてある.

それではまず,呼吸調節について簡単に説明しておこう.
呼吸調節を行う化学受容体は2つ存在し,
『中枢受容体 → CO2上昇を感知し呼吸運動を促進』
『末梢受容体 → O2低下を感知し呼吸運動を促進』がある.

通常,呼吸運動は中枢受容体におけるCO2上昇の感知によって促進されている.
意外に思われるかもしれないが,O2の低下が高度でないと末梢受容体は働いていないのだ.
つまり軽度のCO2上昇では,中枢受容体が呼吸を刺激し,末梢受容体は眠っているということになる.
しかしながら慢性的にCO2が上昇していると,中枢受容体は仕事を放り投げてしまい,末梢受容体に呼吸刺激を任せてしまうのだ.
このことが本症例を理解するための最大のポイントとなる.

イラストを見てもらえばわかるように,本症例の患者さんは,来院時,表でいうと真ん中の状態だよね.
中枢受容体はさぼっているが,末梢受容体が頑張っている状態だ.
すなわち,低酸素により呼吸刺激が促されている状態

ここに高濃度酸素を投与すると,末梢受容体が安心してしまい,中枢受容体が寝ているのにもかかわらず,末梢受容体が呼吸刺激をさぼってしまうのだ.
そして呼吸が抑制され,どんどんCO2が蓄積することによって意識障害を引き起こす.
これがCO2ナルコーシスの典型的なパターンだ.
いやぁ,せっかくよかれと思って酸素を投与したのに,意識障害を起こすなんて悲劇も悲劇だよね.


☆☆☆ はい選択肢ドン! ☆☆☆

それでは病態もわかったことだし,問題も解いておこう.
以上より「C28 この患者の意識レベル低下の原因はどれか」の答えは『d 高流量酸素による呼吸抑制』となる.

簡単に他の選択肢についても触れておくと,
aの高血糖は,血糖値170mg/dlと正常値よりもやや高めだが,この値で意識障害を起こすことはまずない.
糖尿病の診断基準に126mg/dlや200mg/dlの値がでてくるくらいだし,だいたいイメージできるよね.
また,電解質に特に異常所見がみられないのでbは×
cの脳血流量の増加も通常意識障害の原因とならないので×だ.
eの代謝性アルカローシスは進行すると意識障害の可能性はあるが,本症例では呼吸性アシドーシスの代償性のもので意識障害に至ることはない.
また「C29」は『e CO2ナルコーシス』で決まりだよね.


☆☆☆ 換気!! ☆☆☆

最後の「C30 この患者に行う治療はどれか」は大丈夫かな?
すでに呼吸抑制のある本症例で高濃度酸素を投与すると呼吸抑制を促進させてしまうよね.
基本的にはこういった病態では高濃度酸素は禁忌となる.

だから,こちらが換気を促してやりCO2を外に追い出す必要がある.
よって答えは『d 間欠的陽圧呼吸(人工呼吸)』ということになる.
(陽圧呼吸には気管挿管の必要ない非侵襲的なものもある)


☆☆☆ 低酸素血症の方が重大 ☆☆☆

ただし,最後に注意しておくが,
CO2ナルコーシスばかりを恐れてO2投与を控えてはいけない!
ということも肝に命じておいた方がよいだろう.

実は,危険度は「CO2ナルコーシス < 低酸素血症」であるのだ.
たとえCO2ナルコーシスとなっても人工換気さえ行えば回復しうるが,低酸素による脳障害は不可逆的で重大だからである.
もちろん,呼吸抑制を避けるために低濃度酸素から投与するのだが,重度の低酸素血症の場合には躊躇せずに人工換気を開始する.
人工換気下であれば,呼吸抑制を恐れる必要もなく,高濃度酸素投与が可能となるからである.

以上,長々と解説してきたが(長すぎ!?)
COPD急性増悪などの救急疾患への対応は,ただ問題を解くだけでなく,しっかりと病態生理を理解して,少しでも臨床に役立つように勉強しておくとよいだろう!

それでは第2回はこれくらいで幕を閉じようと思います.
そろそろ飽きた!? 話し方が気に入らない!? → すいませんm(_ _)m
それでもまだまだ続ける予定ですので,暖かく見守ってください!

~次回へ続きます~


(編集部 T.K.)